タイレノールを服用した人が次々亡くなる事故が起きた際、第三者による意図的な犯行なのか、それとも生産過程で生じた問題なのかもわからない中、CEOのジェームズ・パーク氏は自社には責任がないと言い逃れをすることもなく、すぐにマスコミを通して「アメリカの消費者にタイレノールを一切服用しないこと」という旨の警告を発信し、自主的に商品の回収を行いました。
同社が行った情報公開は、当時衛生放送を使った30都市にも渡る同時放送、専用フリーダイヤルの設置(事件後11日間で、136,000件の電話があったため)、新聞の一面広告、TV放映(全米85%もの世帯が2.5回見た計算になる露出回数)と、当時の考え得るありとあらゆる手段を講じたそうです。
ここでは重要な情報を包み隠さず発信し続け、マスコミからの厳しい追及を受けても決して委縮せず、常に誠意ある対応を取り続けたことです。
「タイレノール事件」の発生後、ジョンソン・エンド・ジョンソンはマスコミ各社への情報公開と共に、即刻今までにないタイレノールの新パッケージの開発に着手しました。
それは、異物混入を防ぐために作られた「3層密封構造」と呼ばれる特殊な形状のパッケージで、革新的な仕組みとして話題を呼びました。なお、この時に開発されたタイレノールのパッケージは、異物混入を防ぐ業界のスタンダードとして、今でもアメリカの内科医や薬剤師からの多くの支持を得ています。
全米の店頭から姿を消したタイレノールを復活させるために、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、事件の直後から2ヶ月に渡り、可能な限りの状況説明に尽力しました。
それは消費者だけに留まらず、医師やその他関係者に向けても繰り返しプレゼンテーションを行い、できる最大限の対応の結果、タイレノールは数多くのお客様との信頼関係を修復するに至ります。
その結果、同社は「タイレノール事件」の発生からおよそ2ヶ月後にあたる、1982年12月にはなんと事件前の売上の80%にまで回復しました。
亡くなった方がいるのでハッピーエンドとは決して言えない話ですが、このように振舞える企業と商品はさらに大きな信頼や信用を得たと言えるでしょう。
テクニカルな手法や理論的なアプローチも大切ですが、その背景に必要な「ブランド成長に必要な何か」を探るのってワクワクしませんか。
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